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学会情報
1.42026
中国史史料研究会 会報第39号:試し読み

表紙は平遥古城(中国・山西省)。
赤坂 恒明「苟且図存(かりそめに存を図らんとせば)―内モンゴル大学における一日本人モンゴル史研究者の教育活動―(二五)」
内モンゴル大学モンゴル歴史学系への奉職が決定したフフホト訪問から帰国した翌日の2018年4月9日から、就職に向けての事務手続き作業が始まりました。就職は5月1日ですので、三週間の間に諸々の手続きを済ませなければなりません。4月の二週目には日本での前期日程の授業も開講となり、私には平日の空き日が木曜日だけで、日程はなかなか密となっております。
就職の契約書である「聘期協議書」を内モンゴル大学の主管部門の記録に載せてもらう手続き(備案)は、タイブン(周太平)教授が担当してくださり、また、内モンゴル大学の「国際合作与交流処」(国際協力・交流事務所)との連絡はモンゴルフー講師が当たってくださります。
その「国際合作与交流処」によると、中華人民共和国で就労するためには就労ビザを取得する必要があり、その手続きのために私自身が五月までに日本国内で整えなければならない書類は次のとおりであるとの由です。
① 推薦状
② 健康診断書
③ 無犯罪証明書
これらのうち、①推薦状は、大学院のゼミにおける先輩である早稲田大学文学学術院の柳澤明教授に、一筆、お願いできますので、特に問題はありません。②健康診断書については、中国国内でも二度目の健康診断をするそうですが、まず日本で健康診断書を出してもらう必要があるとのことです。③無犯罪証明書は、そもそも、そのようなものが日本に実在しているのかどうかも疑わしく、実のところ、よく分かりません。
そこで、尋ねるべきは頼りがいのある御先達、ということで、上海の復旦大学にお勤めの佐藤憲行さんに、これらの書類について(電子メールで)尋ねてみました。……
亀田俊和「亀田俊和の台湾通信 第39回」
本題に入る前に、読者のみなさんにお伝えしなければならないことがある。
今年の7月をもって、私は国立台湾大学を退職した。8年間の大学教員生活を通して、経済的な不安なく多くの論文や著書を発表することができた。また教育者としての研鑽も積み、優秀な学生たちに多くのことを教わって成長することができた。さらに人生初の海外での生活を体験し、中国語を初めて学び、豊かな異文化を体験することができた。したがって、台大には非常に感謝している。
今後であるが、永住権を獲得できたので引き続き台湾で生活することにした。よって、この連載も続けることになった。読者のみなさんには、引き続きよろしくお願いします。
さて、今年の夏休み6月23日(月)から26日(木)にかけてパラオという島を旅行してきた。
パラオは、南洋ミクロネシアにある島国である。フィリピンの東部にあり、緯度は同国最南端と同じくらいである。人口は2万人にも満たない、小さな国である。……
秋山陽一郎「劉向・劉歆略伝」
本稿では校書事業の責任者であった劉向(前79~前8)と劉歆(?~後23)父子について紹介したい。より詳しく知りたい方は、池田秀三氏の「劉向の学問と思想」か古勝隆一氏の『目録学の誕生:劉向が生んだ書物文化』をご覧いただくと良いだろう。
第一節 劉向:宗族復権と外戚宦官排斥に注力
劉向は元鳳二年(前79)に生まれた。はじめ名を更生といい、字を子政といった。
その祖先は高祖劉邦の異母弟、楚の元王劉交(?~前178)である。劉交は学問を好み、詩経学の一派『魯詩』の開祖として知られる申培らと共に、荀子の門弟である浮邱伯より『詩経』を学んだ。独自に『元王詩』という注解を遺し、『詩経』への造詣は一家言を立てるほどであった。以後、楚の元王劉交の子の夷王劉郢客、劉郢客の弟の文王劉礼、劉礼の弟劉富、劉富の子の劉辟彊、劉辟彊の子の劉徳(河間献王劉徳とは同姓同名の別人)と、劉交の世系は代々宗室劉氏を束ねる「宗正」の職を務め、学問を好んだ人物を多く輩出した。劉向はその劉徳の子として生を受ける。保科季子氏は二劉の校書事業について「統括はもちろん劉向(死後は劉歆)であり、劉向がその任に選ばれた理由には、その学識もさることながら、劉向の祖父・劉辟彊、父・劉徳、そして劉向自身と、代々宗正を歴任したことが大きいのではないか」とする。
劉向の官歴は、父劉徳(?~前57)の功績によって得た輦郎という天子の手引きぐるまを護衛する官職から始まった。わずか十二歳の時である。元服して諫大夫となり、王褒・張子僑らと共に禁門のひとつである金馬門に詰めて宣帝(在位前74~前48)の下問に備えた。宣帝は武帝の前例に倣い、名儒や俊材を自らの左右に置こうとしたことから、劉向は若年の頃から皇帝の側近くで仕える機会に恵まれる。
錬金術に手を染める
劉向の家には『枕中鴻宝苑秘書』なる、錬金術や延命術について書かれた方術の書があった。この書は、劉向の父劉徳が武帝(在位前141~前87)の時に淮南王劉安の疑獄を裁いて入手した秘伝の書とのことで、宣帝が神仙や方術を好むのを見て、劉向はこの『枕中鴻宝苑秘書』を宣帝に献上し、この書があれば黄金が作れると言った。
そこで宣帝は劉向に尚方鋳作(尚方は禁中の器物を制作する役職)の役目を与えて黄金を作らせようとしたが、莫大な費用を掛けながら、むなしく失敗に終わった。劉向は黄金偽造の罪で弾劾され、死罪に相当するとして獄に収監される。……
佐藤信弥「官吏としてのスパイ、社畜としての官吏――『風起隴西』、『西遊記事変』、そして『長安のライチ』」
このほど早川書房より馬伯庸『風起隴西』の翻訳が出版された(斎藤正高訳『風起隴西 三国密偵伝』、ハヤカワミステリ)。筆者は二〇二二年に中国で同名のドラマ版が配信された際に鑑賞しており、その原作の翻訳にも興味を持って手に取った。馬伯庸は中国の人気作家で、歴史物やSF作品を手がけ、日本でも放映された『長安二十四時』、『三国志秘密の皇帝』など、ドラマ化された作品もたくさんある。
本作『風起隴西』は三国志の終盤、諸葛亮による北伐の間の挿話であり、魏と蜀の諜報戦を描いたものである。主人公となるのは蜀の諜報機関である司聞曹(実在しない架空の機関である)の官吏の荀詡。彼はそこで対魏反諜工作の部署に属し、魏の間諜の「燭龍」の正体を追い求めるという筋である。ドラマ版は過去にWOWOWで放送されたほか、『三国志外伝 愛と悲しみのスパイ』のタイトルで9月からNHKのBSでも放送されているので、ご覧になった方もおられるだろう。
ただ、ドラマ版は原作とは人物関係や結末など異なる点が多々あり、別物と言っていいだろう。一例をあげると、ドラマ版では荀詡とともにその義兄弟にして縁戚の陳恭も主役の扱いとなっているが、原作では陳恭は主要登場人物のひとりではあるものの、出番は序盤と終盤に限られている。その末路もドラマ版とはまったく異なっている。……
佐藤信弥「世界漢字学会第十一届年会参加報告」
世界漢字学会については、本誌ではこれまで筆者が参加した第六、七、八(オンライン開催)、十届年会について参加報告が掲載されているので、学会についての説明は省略する。2013年開催の第一届年会以来、年1回東アジアを中心に各地の大学で漢字学に関する国際学会が開催されている。今回の第十一届は2025年10月16日~20日に大阪教育大学天王寺キャンパスで開催された。ただし16日と20日は海外からの参加者の移動日につき、実質としては17日~19日の3日間である。日本での開催は第二届、第七届に続き3回目となる。この学会では毎回テーマが設定されており、今回のテーマは「面向未来教育、為AI賦能世界漢字学知識体系」(未来の教育に向けて、AIに世界の漢字学の知識体系を付与する)であり、AIに関連する発表報告もいくつかなされた。
参加人数は100名程度である。筆者が所属する立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所からの参加者と発表題目は以下の通りである(発表順)。
・佐藤「西周金文中的“中国”与“京師”」
・出野友莉「関於龍的漢字和龍的形態変遷」
・山田崇仁「中国青銅器銘文電子文本製作研究:利用TEI建構結構化数位文本之嘗試」
・村上幸造「上古漢語“乃”字的含義」
・松宮貴之「結縄与書方」
・重信あゆみ「従寺子屋的漢字学習教材探討江戸庶民“学知”的形成」
・大形徹「鯤与渾沌――理解『荘子』思想之関鍵詞」……






