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匈奴初見考
「匈奴」の活動を最も古く年代附けるのは、『史記』秦本紀惠文王後元七年(前318)の「七年、樂池相秦、韓・趙・魏・燕・齊帥匈奴共攻秦」であり、『史記』には以後、戰國後期から統一秦時代における「匈奴」の活動が散見する。考古學の方面においても戰國期に遡る「匈奴」の遺跡の存在が指摘されており、「匈奴」の戰國期における出現は自明の事實であるかの如くである。だが、ここで指摘すべきは、『史記』の成書が前漢中期に降るという事實である。『史記』が戰國・統一秦時代に「匈奴」の活動を記すという事實は、戰國・統一秦時代に實際に「匈奴」の呼稱が存在したことをただちに證するものではない。『史記』が戰國後期・統一秦に年代附けている「匈奴」が、原資料では別の稱謂をもっていたものを、『史記』が「匈奴」に翻譯した可能性が検討されねばならない。本稿ではこのような視點で戰國・統一秦時代の「匈奴」に關わる記事の檢討を行ったものである。
※この論文は、『愛新覺羅氏三代阿爾泰学論集』(明善堂、2002年)に掲載された、同名の中国語論文のために執筆した日本語版論文を、志学社論文叢書の一冊として電子書籍で単行したものです。論文の体裁・内容については、原則として刊行当時のものをそのままになっております。