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橋姫とつめのあそび
『今昔物語集』には、近江勢田橋の上で男が妖しげな女から美濃収橋の西つめの女に小箱を届けるよう言付かったが、
その中には抉り取った人の目と毛の付いた男根が入っていたという、怪異で色情的な物語が伝えられる。
京の一条堀川戻橋に現れた鬼女、宇治の橋姫の物語は広く知られているが、
『日本書紀』は河内玉手の打橋のつめの遊びを主題にした歌を記している。
『万葉集』も、河内大橋のつめの歌を載録している。一体、橋や橋のつめでは何が行なわれていたのだろうか。
ここでは、橋と架橋をめぐる史料の分析から、
宇治の橋姫の原像および橋とそのつめで催された祭儀を復原して、古代人の心性を描き出す。
※この論文は、増尾伸一郎/北条勝貴/工藤健一(編)『環境と心性の文化史』下巻(勉誠出版、2003年)に掲載された、
「架橋と心性「橋姫とつめのあそび」」が初出になっています。引用の際には志学社論文叢書版を使用した旨注記をしてください。