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学会情報
11.42022
中国史史料研究会 会報第21号:試し読み
表紙は剣門関(四川省広元市)。
赤坂恒明「苟且図存(かりそめに存を図らんとせば)―内モンゴル大学における一日本人モンゴル史研究者の教育活動―(八)」
2018年1月7日における内モンゴル大学モンゴル歴史学系(学部)での「面接」は無事に終了し、翌1月8日は、昼前にモンゴル歴史学系側から大学当局へ提出する書類に記入すべき項目内容の補足等を行い。また、午後17時から一時間ほど、モンゴル歴史学系の学生たちを対象に、表向きの目的である学術講演を行いました。
当日の気温は最低零下14度で、昼でも零下11度でした。風が吹いていなければ、それほど寒いとも感じませんが、風がありますと、さすがに寒さが厳しく感じられます。その日の昼は強風ではありませんが、風が吹く中を歩いて、大学近くのチャハル・モンゴル料理店に連れて行ってもらい、昼食を摂りました。このモンゴル料理屋「察哈爾汗飯館 čaqar qan mongγol qoγulan gel」は、内モンゴル大学
北区の西側の「満都海西巷」に幾つも並ぶモンゴル料理店の一つで、就職後には最も足しげく通うこととなった店です。
店の入り口から左手の壁側に陣取りましたところ、ちょうど私の右ひじの場所に位置していた給湯暖房の水栓が漏水しており、「毛細管現象」で、上着から下まで衣服の右ひじがすっかり濡れてしまいました。宿泊所にはドライヤーがありますので、特に心配はありませんでしたが、料理店を出てから宿泊所に戻ってくる間に、上着の右ひじ部分は、板のように氷結しました。あれでプロレス技のエルボー攻撃をかければ、相手に「致命傷」を与えることも可能かも知れません。ともかく、暖かいチャハル・モンゴル料理を堪能し、宿泊所で衣服を乾燥させた後、あらためて大学に赴き、予定どおり学術講演を行い、無事に所用を済ませました次第です。
このたびの訪問は、フフホト市内の滞在時間が計54時間という短さでした。……
亀田俊和「亀田俊和の台湾通信 第22回」
私はあまり映画を見ない。それでも台湾に来てから、何度か映画を見に行く機会があった。中国語はあまり聴き取れないが、字幕があれば何とかついていける。中世に中国に留学した禅宗の僧侶たちも、会話は苦手だったが読解は得意だったと何かの折に聞いたことがある。日本人は語学に関して数百年変わっていないなと感じる。
それはそうとして、『スパイダーマン』『トップガン マーヴェリック』などのハリウッドの映画もときどき見に行った。話されているのは当然英語で、それに中国語の字幕がつく。ふと、日本語が一切ないという至極当たり前の事実に気づいた。台湾に来る前はまったく想像もしなかったことを平然としている自分に驚いている。
そこで今回は、最近見て印象に残っている台湾映画2作の感想を書いてみたい。それは、2011年に公開された『セデック・バレ』と2014年公開の『KANO 1931海の向こうの甲子園』である。前者は魏徳聖(ウェイ・ダーション)氏が監督を務め、後者は同氏が脚本と制作を担当した。
まず、『セデック・バレ』は霧社事件を描いた作品である。……
石原 明徳「防衛研究所、戦史研究センターの紹介」
会員の石原明徳と申します。私は、防衛省防衛研究所戦史研究センター国際紛争史研究室に所属しています。このたび、学部同窓の山田崇仁先生から所属先のことを書いてみないかとお誘いをうけました。
中国史史料研究会に所属されている会員の皆様の中でも、中国・東アジア近現代史を専門としている方々は研究史資料収集などで一度は防衛研究所を訪れたことがあるのではないでしょうか。ですが、それら以外を専門としている方々にとっては、あまりなじみがないなあ、といったところだと思います。
そもそも「防衛」や「戦史」という分野を専門的に扱っている大学・研究機関は日本国内には稀有であり、一般的に周知された分野とはなかなか言い難いのではと思います。そこで、「防衛研究所」と「戦史研究センター」を紹介することで、探求心溢れる会員の皆様の知識の幅を広げる一助になればと思い筆をとることと致しました。駄文となりますが、どうぞご容赦をお願い致します。
防衛研究所とはいかなる組織なのでしょうか?2022年2月のウクライナ戦争勃発以降、防衛研究所所属の研究者を連日のようにテレビで目にした記憶も新しいのではないかと思います。……
佐藤 信弥「古勝隆一『中国注疏講義―経書の巻』(法蔵館、2022年)」
魚返善雄『漢文の学び方』(志学社選書、 2022年)、宮本徹・松江崇『漢文の読み方――原典読解の基礎』(放送大学教材、2019年)、ちくま学芸文庫から復刊された前野直彬『漢文入門』(2015年)と『精講 漢文』(2018年)など、近年漢文の入門書の新刊・復刊が相次いでいる。それだけ漢文を勉強しなおしたいという読者のニーズがあるということだろう。本書はそうした漢文入門の中で、漢文の読み方から一歩進めたものとなる。これらの書のような漢文の語法の解説書ではなく、注疏を利用して漢文、特に経書(五経など儒家の経典)を読解する方法の解説書なのである。
「注疏」とは広く漢籍の注釈を指す。このうち「注」とは前漢以後に登場した漢籍の注釈のことで、比較的短文であることが多い。「疏」とは本書に説明されているように、南北朝時代に登場した注釈のスタイルで、漢籍の本文だけでなく漢代以来の「注」も含めて解説したものである。長文のものが多い。
本書は「基本編」と「読解編」、そして「附録」の三部分から成る。このうち本文に当たる「基本編」「読解編」は合わせて全十五講構成である。……