学会情報

中国史史料研究会 会報第27号:試し読み

表紙は始皇帝陵の兵馬俑(陝西省・西安市)。

 


赤坂 恒明「苟且図存(かりそめに存を図らんとせば)―内モンゴル大学における一日本人モンゴル史研究者の教育活動―(一四)」

2018年4月1日(日曜日)は、ボヤンデルゲル教授の御配慮により、連続講義「突厥語入門 ─ 從歴史学的視座」は休講となりました。突厥史が御専門のBB先生のお誘いにより、内モンゴル大学の考古学・歴史学関係者たちによる北魏(鮮卑)関係の両遺跡の巡検に同行いたしましたためです。

その両遺跡とは、すなわち、フフホト市区の南方、ホリンゲル qoringer(和林格爾)県の「土城子遺址」と、陰山(大青山)山中の武川県 大青山郷 壩頂村 蜈蚣壩の「壩頂圜丘遺址」です。

私一人だけでは言葉が通じないということで、通訳係として、連続講義の出席者である日本留学経験者の博士課程大学院生、Nさん(専攻は社会言語学研究)が同行することとなりました。

二台の自動車に分乗して、まず、ホリンゲル県に向かいます。

ホリンゲルの「土城子遺址」は、北魏の都「盛楽」に比定されており、遺跡に隣接して「盛楽博物館」が建てられております。……


亀田 俊和「亀田俊和の台湾通信 第28回」

今回は、台湾に来てから私が受けた医療について書いてみよう。新型コロナ対策については以前2回ほど紹介したが、その他の医療もなかなか興味深いと思うからである。

まず印象的なのは、医療費が非常に安いことである。通常の診察は50元(1元=約4.5元)、治療は200元ほどで受けられる。処方箋も無料である。

しかしいちばん驚いたのは、診察券がないことである。健康保険のカードだけでいい。日本の病院の駐車場で働いていた頃、たくさんの病院に通っている患者さんが財布に診察券を何十枚も入れていて、出口のゲートを通るのにとても不便そうだったのを見たことがある(当時の京大病院は、患者は診察券を機械に入れると無料で出られる方式だった)。日本もぜひ、台湾のようにシンプルにしてほしい。

次いで、日本の病院よりも手続きやルールが厳格な印象がある。私は高脂血症を患っており、コレステロール値を下げる薬を常時服用している。3ヶ月ほどで薬がなくなるので、また病院に行って処方箋をもらう。その前に血液検査をするのだが、検査日の朝は固体も液体も一切摂取できない。日本だとお茶くらいなら大目に見てもらって検査を受けられるのだが、こちらは非常に厳格で検査を拒否されて後日受けたことがある。……


佐藤 信弥「東洋学の名著 第五回:白川静『漢字―生い立ちとその背景―』(岩波新書、1970年)」

本書は岩波新書で1970年に刊行され、1999年に平凡社の『白川静著作集』第1巻に収録された。本稿では岩波新書版を参照する。本書は六章からなる。全編章題に関係する事項を羅列するという形式であるので、非常に内容をまとめづらい書であるのだが、以下本書の内容について筆者の気になった点を中心に紹介していく。

「一 象形文字とその論理」では、「はじめにことばがあった」の一文で始まる『新約聖書』「ヨハネによる福音書」の冒頭部分を引用し、中国における文字の誕生について述べる。本書では、文字は元来神のことばであり、また神の代理人である王の権威の確立を助けるものであると位置づける。そして甲骨文の発見の経緯や甲骨文の例、漢字の象形、会意、仮借などの成り立ちの種類を紹介する。

著者白川静は、漢字の字形は儀礼や習俗、古代的な観念の上に成立したものであり、その造型のうちに厳密な意味が含められているという前提を確認し、字源(漢字の成り立ち)に関する研究は、甲骨文や金文によってその本来の正しい形を把握する必要があり、その形の意味するところを、当時の観念や思惟方法に従って理解する必要があると述べる。そして古文字の研究は、宗教民族学や民俗学の課題として扱うことによって、はじめて正当に位置づけることができると言う。……


 

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