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雄略天皇の古代史

「大悪天皇」か、それとも「有徳天皇」か──。

雄略天皇の治世は、おおよそ5世紀後半に比定される。
中国史書に「倭国」として登場するこの時期の日本は、各地で巨大な前方後円墳が営まれる古墳時代であり、
豪族たちによる激しい権力抗争が繰り広げられていた。
倭王の権力はいまだ盤石とはいえず、ヤマト王権は豪族たちが連合して倭王を推戴し、
それぞれの職掌を分担する非専権的王権であった。
豪族連合たるヤマト王権を専権的王権へと発展させ、
新たな政治体制を構築した人物こそが雄略天皇である、とする評価がある。
しかし、雄略死後の王位継承の混乱と王統断絶、
そして6世紀初頭に傍系から継体天皇が即位するに至ることを考慮すれば、
雄略朝を単純に画期と評価してよいのか、なお疑問が残る。
本書では、雄略天皇に関する記紀の所伝、出土文字史料、そして中国史書から王権と豪族の動向を復原し、
5世紀後半から6世紀前半にいたる時期のヤマト王権の政治史復原を試みる。
豪族の連合体である「遅れた」政権から、より「進んだ」専権的王権へ──
という「進化論的古代史観」を克服し、先入観を排した古代史像を描き出す。

 

■目次■

序 論 なぜ雄略天皇か ―課題と、それに向き合う基本的立場―
第一部 『記』・『紀』が伝える雄略天皇とその治世
第一章 雄略天皇の即位 ―葛城氏とライバルの王族を滅ぼす―
第二章 「日の御子」と称えられた雄略天皇
第三章 雄略天皇と葛城の一言主神 ―有徳天皇か―
第四章 秦氏の渡来と雄略天皇の秦氏優遇策
第五章 雄略天皇に追放された葛城の高鴨神の真実
第六章 雄略天皇と采女と物部氏 ―大悪天皇か―
第七章 吉備氏の征圧と雄略天皇の死去
第二部 埼玉稲荷山古墳出土鉄剣銘文から描く雄略天皇とその時代
第一章 鉄剣銘文と獲加多支鹵大王
第二章 鉄剣銘文の八代の系譜について
第三章 銘文から雄略朝の時代と社会を描く
第三部 『宋書』倭国伝から知られる倭王武とその治世
第四部 雄略朝王権専制化画期説の検討
結語にかえて 雄略天皇は旧体制を打破・新体制を確立できたか
参考文献/あとがき

 

著:平林章仁
判型:四六判 368ページ
ISBN:978-4-909868-04-6 C0321
本体価格:3300円
発売:2021年6月30日

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